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会長挨拶

日本真空学会 会長に就任して

齊藤 芳男

平成27-28年度の日本真空学会・会長を務めさせて頂きます.歴代の会長の先生方と学会会員の皆様とでここまで発展させてきた学会を,さらに充実したものにするため努力致す所存です.
日本真空学会は,我が国の学会の中でも長い歴史を持つものの一つです.1941年に真空同好会が発足し,1950年にはより発展した形で真空技術研究会となりました.この時に「真空技術」が創刊されました.1954年には真空技術研究会関西支部,さらに真空機器協会が発足し,そして,1958年 7 月にこれらが合併して日本真空協会が創設され「真空」誌が発刊されました.2011年 2 月には法人化を行い一般社団法人「日本真空学会」となっています.
50年以上にわたり学会が活動できた背景には,真空の分野における科学と産業との相補的な発展が,これはさらに長い歴史に裏打ちされたものですが,あったからだと思います.紀元前からの哲学と科学の命題であった「物質とその隙間である真空の存在」を実証したトリチェリの実験により真空を目の当たりにし,そこから大気圧や気体分子の実証実験が一挙に進みましたが,それには真空ポンプの実用化が必須でした.一方で真空ポンプの実用化は白熱電球の量産を可能にしましたが,この時エジソンが心血を注いだ課題は水分子の排気法でした(R. K. Waits: J. Vac. Sci. Technol. A, 21 (2003) 881).これが高真空の実現に繋がり,その結果電子が発見されます.そして,物質の根源を探る加速器,高周波通信機器である発信管や半導体素子の誕生など,真空技術に支えられた科学と産業の交互の発展が加速され今日に至っています.
日本真空学会には,広範な基礎科学で構成される真空の科学と,今や多くの分野で欠かせないものとなっている真空技術とに,これからも貢献が求められています.今年の巻頭言で尾浦前会長が述べられているように(J. Vac. Sci. Jpn., 58 (2015) 1),「真空の科学と技術を継続的に発展させるため」に日本真空学会が何をすべきかは私たちの課題です.そのため,現在,各国真空協会と連携したワークショップ開催などのグローバル化,講演会でのオーガナイズドセッションの開講,産学にわたっての教育啓蒙プログラムの策案など,まずはできるものから順次実行すべく学会として準備しています.一方で,私たち学会会員の一人一人も真空の科学技術の発展に寄与していかなければなりませんが,そのためには真空の科学と技術が生み出されてきた原点に立ち返ってそれぞれの抱える課題を考えることが必要です.目先の成果や応用だけを目指しても,科学や産業はなかなか進化しません.気体分子運動論を完成させたマクスウェルは,「科学は,偉大な発見者の生涯に何らかの興味を覚えるときに,がまんできるものとなる」と言っています(“地球は青かった”岩波ジュニア新書,平田寛編著,岩波書店,東京,1987).課題の中に原点を捜し出す楽しさを見つけることも大切だと思います.